検定対策ことはじめ「こそあど」

もの、こと、ばしょなどを表す代名詞 「あれ、それ、あそこ」などを指示代名詞と呼びますが、

「これ、それ、あれ、どれ」という形から「こそあど」と呼ぶことも多いです。

日本語のクラスで教えるときに、新人先生にとっては、かなり気をつかう項目かもしれませんね。

教え方として、単純なのは、

「こ」(ちかい)→「そ」(ちょっと遠い)→「あ」(遠い)

という区別。

話し手、聞き手が一緒にいて、同じ目線で、ものごとを見ているときに使います。

 

が、もっと多く使われるのが、

「こ」(話し手の近くにある)「そ」(聞き手の近くにある)「あ」(両者から遠い)

話し手 話し手の近く 聞き手の近く 聞き手
ここ、これ etc それ、そこ  etc

例えば、二人で向かい合わせにテーブルに座っているとき、

「ちょっと、そこの胡椒、とって」「ん?これ?」「そう、それ」という会話は表の例。

ちょうど、二人を包む円があって、ちょうど真ん中で区切って、その線より、話し手に近かったら、「こ」、聞き手に近かったら「そ」ということです。

 

で、ふたりのその円の外側にあるものは「あ」になります。

「胡椒とって」で「その胡椒!」「この胡椒?」「うん、その胡椒」と会話してたふたりが、

遠くの席をみて、「あそこに新しい胡椒あるね」「ああ」「あれ、取ってきてよ」というときの「あ」

です。

 

同じものを指すときに、話し手聞き手の位置によって、言い方が変わるというのが、「こそあど」の難しさ。

先生としての、発話にも気を使います。先生の模範発声に対して、同じ発声を一斉に学習者がコーラスすることがあるのですが、

その時に、(先生がペンをもって)「これはペンです」

(学習者がにこにこと)「これはぺんです」と繰り返す。これはNGですね。

単に音、発音の練習なら、OKだけど、

そうじゃなくて、意味も伝える場面なら、先生がペンを持っていて、学習者からは「それはペンです」というのが正しい状況文なのに、「これはペンです」と言わせるのは、疑問が残りますね。

そのあたりが先生としてのひとつの技術になります。

 

★教えるときのヒント★

なお、英語で this といえば、「これ」と訳すと思うんですが、

this pen といえば、「このペン」ですね。

つまり、英語圏の人に this = これ

で教えてしまうと、

「これ」 「これぺん」 というかもしれませんよ。 翻訳が万能ではない例ですね。

ちなみに 人を紹介するときも This is Yoko (こちらはようこさんです)

電話で名乗るときも、This is Taro speaking (こちらは、タローです)のように使いますね。

だから、[This=これ」と思い込んでしまうと、 これはようこです、と人を紹介することになります。

要注意。言葉によってのずれがわかる例ですね。